【例文・注意点つき】フリーランスの仕事の断り方・断るべきケースを解説

フリーランスとして活動していると、様々な仕事の相談が舞い込みます。

スケジュールが合わない、報酬が見合わない、スキルや業務範囲が合わないなど、引き受けるべきか悩む場面も少なくないでしょう。

仕事を獲得するスキルはもちろん大切ですが、それと同じくらい重要なのが仕事を適切に「断る」スキルです。

もし、断るべき依頼を断り切れずに引き受けてしまうと、「納期遅れ」「多忙なのに稼げない」「信用失墜」といった思わぬトラブルにつながりかねません。

この記事では、フリーランスが健全に活動を続けていくために、どのようなケースで断るべきか上手な仕事の断り方について解説します。

文野くん
文野くん

せっかく声をかけてもらったのに、断るのってやっぱり気が引ける…

美図紀さん
美図紀さん

でも、無理をして引き受けるのではなく、上手な断り方を身につけることも、フリーランスとして大切なスキルです!

目次

フリーランスが仕事を断るべきケース

フリーランスとして経験を積み、少しずつ認知度が上がってくると様々な方面から仕事の依頼が増えてきます。

しかし、それに伴い「この仕事、本当に受けるべきだろうか?」「もしかしたら断った方が良いのでは?」と悩む場面も多くなるのではないでしょうか。

ここでは、フリーランスが仕事を断ることを検討すべき具体的なケースと理由について解説します。

ご自身の状況と照らし合わせながら、判断基準の一つとして参考にしてください。

納期が合わない(スケジュールが埋まっている)

特に活動を始めたばかりの頃は、「一つでも多くの仕事を受けたい」「チャンスを逃したくない」という気持ちが強くなるものです。

とはいえ、ご自身のキャパシティを超えるスケジュールで安易に仕事を引き受けるのは危険。

無理なスケジュールは、睡眠不足や過労につながり、体調を崩す原因となります。

作業の質が低下するだけでなく、最悪の場合、納期遅延によってクライアントからの信用を一気に失うことになりかねません。

状況によっては、損害賠償などの問題に発展するリスクもゼロではありません。

まずは、クライアントに納期調整が可能か相談してみましょう。

交渉しても双方の都合が合わない場合は、残念ですが、勇気を持って断るという判断も必要です。

報酬が相場より低い/割に合わない

提示された報酬額が、自分のスキルや経験、一般的な市場相場と比較して明らかに低いと感じる場合も断ることを検討すべきケースです。

納得できない報酬で仕事を引き受けることは、いわゆる「安請け合い」であり、「薄利多売」の状態に陥りかねません。

時間と労力をかけているにも関わらず、十分な収益が得られず疲弊してしまう可能性があります。

また、不当に安い価格で仕事を受けることは、業界全体の価格水準を下げる一因です。

適正な価格で依頼をしてくれる他のクライアントや同業者にも間接的に影響を与えてしまうこともあります。

まずは希望する報酬額での対応が可能か単価交渉を試みましょう。

それでも双方にとって納得のいく条件に至らない場合は、辞退するのが賢明な判断と言えます。

自分のスキル・対応範囲外の依頼(ミスマッチ)

クライアントから相談された仕事内容が、自分のスキルや提供できるサービス範囲から外れている場合も注意が必要です。

クライアントは必ずしもあなたの専門分野に詳しいわけではありません。

クライアントA
クライアントA

(Webデザイナーだから、きっとロゴデザインやイラスト制作もできるだろう)

クライアントB
クライアントB

(文章を書くのが上手いライターだから、SNSの運用も得意だろう)

といった思い込みから依頼してくるケースもあります。

もし、対応できない、あるいは品質を保証できない案件にも関わらず、「できます」と偽って受注してしまうとどうなるでしょうか。

結局はクライアントの期待に応えられず、トラブルに発展する可能性が非常に高いです。

納品後の修正が何度も発生したり、最悪の場合は報酬が支払われなかったり、そして何より大切な信用を失ったりする結果につながりかねません。

正直に対応範囲外であることを伝えることが、双方にとって最も誠実な対応です。

怪しい依頼内容、悪質なクライアント

残念ながら、世の中には健全とは言えない依頼も存在します。

例えば、依頼内容自体に法的な問題(著作権を侵害するような制作指示、薬機法に抵触する表現の強要、ステルスマーケティングの依頼など)や社会的な倫理観に照らして問題があると感じられる場合です。

また、クライアントとのコミュニケーションにおいて著しい不安を感じる場合も要注意。

高圧的な態度をとる、指示があまりにも曖昧で質問しても明確な回答が得られない、契約前に執拗な値下げ要求を繰り返す、といったケースが挙げられます。

少しでも「怪しい」「何かおかしい」「このまま進めるのは不安だ」といった違和感を覚えたら、断るべきサインです。

自分の身を守るためにも、きっぱりと断る勇気を持ちましょう。無理に関わる必要は全くありません。

文野くん
文野くん

自分のキャパを超えそうな時、スキル・報酬が見合わない時、『怪しい』と感じた時はちゃんと断るべきなんでだね。

美図紀さん
美図紀さん

断ることは決して悪いことではなく、結果的に自分とクライアントを守ることにも繋がります!

断る前に確認しておくべきこと

仕事の相談を受けた際、一度立ち止まって確認しておきたいことがあります。

もしかしたら、少しの調整や工夫次第で双方にとって良い着地点が見つかるかもしれません。

文野くん
文野くん

(これはちょっと難しいかな)

文野くん
文野くん

(今回は断るしかないかもしれない)

と思った場合もいきなり断るのではなく、まずは以下のような「調整」や「代替策」の可能性を探ってみましょう。

納期や報酬を交渉すれば対応可能か?

「この納期では厳しいですが、〇日までなら対応可能です」

「この予算では難しいですが、〇〇円であればお受けできます」

といったように、条件次第では対応できる余地がないか検討しましょう。

スキル的に厳しい場合は、他の人を紹介できるか?

完全に自分の専門外である場合でも、もし信頼できる同業者や知人にその分野の専門家がいれば、

「あいにく私は専門外なのですが、〇〇さんという方が得意とされています」

のように紹介できる可能性があります。(もちろん、紹介する場合は事前に相手の許可を得ましょう)

依頼の目的・意図を再度確認する

クライアントの依頼内容が曖昧だったり、こちらとの認識にズレがあったりする場合もあります。

改めて依頼の背景や目的、具体的な要望などを質問することで、誤解が解けたり、別の解決策が見つかることもあります。

最終的に断る結果になったとしても、その前に代替案や調整の可能性を探る姿勢を見せることは、クライアントと良好な関係を築く上で大切です。

文野くん
文野くん

すぐに「無理です」って言うんじゃなくて、代替案を考えたり、条件交渉してみたりする姿勢が大事なんだね。

美図紀さん
美図紀さん

親身にヒアリングする姿勢が評価されて、クライアントから信用を得られることもあります!

継続案件は契約書を確認してから断る

クライアントとの間で契約書を交わしている継続案件を途中で断る(終了する)場合には、特に慎重な対応が必要です。

契約内容によっては、一方的な申し出による契約解除が認められなかったり、予期せぬトラブルに発展したりする可能性があります。

フリーランスが関わることの多い「請負契約」と「(準)委任契約」について、契約終了時の注意点に触れておきます。

ただし、これはあくまで一般的な参考情報です。

実際の対応は個別の契約内容や状況、相手方との関係性によって大きく異なることをご留意ください。

請負契約の場合

請負契約は、仕事の「完成」(成果物の納品など)を目的とする契約です。

契約で定められた成果物を完成させて初めて報酬が支払われるのが原則です。

途中で契約を終了する場合は、それまでの作業に対する報酬が支払われない、納期遅延や契約不履行とみなされる状況によってはクライアントから損害賠償を請求されるリスクが考えられます。

(準)委任契約の場合

(準)委任契約は、特定の業務の「遂行」を目的とする契約です。

成果物の完成義務はなく、業務を行ったこと自体に対して報酬が支払われます。

民法上は各当事者がいつでも解除できるのが原則ですが、相手方に不利な時期に解除した場合や契約書に特約がある場合などは、損害賠償責任が生じる可能性もあります。

また、契約終了の仕方によっては、それまでの業務に対する報酬の支払いを巡ってトラブルになるケースも想定されます。

いずれの契約形態であっても契約書が存在する場合は、

約解除に関する条項
  • 解約可能な条件
  • 予告期間
  • 違約金の有無など

をしっかりと確認することが不可欠です。

また、一方的に「辞めます」と告げて連絡を絶つようなことは絶対に避けましょう

クライアントと話し合いの場を持ち、双方が納得のいく形で契約を終了できるよう、丁寧に進めることを心がけましょう。

フリーランスの仕事の断り方のポイント

仕事を断ると決めたら、次は「伝え方」が重要です。

断り方次第で、クライアントに与える印象や今後の関係性が変わることもあります。

相手に失礼なく、誠意が伝わる「断り方の基本」として、押さえておきたい6つのポイントを簡潔に紹介します。

感謝の意を伝える

「この度はご相談いただき、ありがとうございます」のように、声をかけてくれたことへの感謝を伝えましょう。

断る理由は明確かつ正直に

なぜ受けられないのか(例: スケジュール、スキル、条件など)理由を正直に伝えましょう。

曖昧な言い訳や嘘は信頼を損ないます。

丁寧な表現で断る

「大変申し訳ございませんが」「誠に残念ながら」といったクッション言葉を使い、表現を和らげましょう。

「無理です」「できません」などとストレートに断るよりも、相手への配慮が伝わります。

迅速に返信する

断る場合でも、返信はできるだけ早く行いましょう。相手はあなたからの返事を待っています。

放置することは相手の時間を奪う行為です。遅くとも1〜2営業日以内には返信しましょう。

可能なら代案を提示する

必須ではありませんが、「〇月以降なら対応可能です」「〇〇円であればお受けできます」「別の方を紹介しましょうか?」など、代替案を提示できるとより丁寧です。

前向きな姿勢が、次の機会につながることもあります。

請け負う前に断る

最も重要なのは、正式に仕事を請け負う前に断ることです。

一度引き受けてからキャンセルするのは、相手に多大な迷惑をかけ、信頼を失います。

受けるかどうかの判断は慎重に、早めに行いましょう。

文野くん
文野くん

感謝を伝えたり、理由もちゃんと言って、早く返事することが大切なんだね!

文野くん
文野くん

たしかに、自分が依頼する立場だったら、その方がずっと印象が良い。

美図紀さん
美図紀さん

自分が相談する立場に立ってみて、気分が悪くならない断り方を考えましょう!

【ケース別】メール・チャットで断る例文・伝え方のコツ

この章では、具体的によくあるケース別の断り方について、メールやチャットで使える例文とそのポイントを紹介します。

もちろん、ここに挙げるのはあくまで一例です。

実際の状況やクライアントとの関係性に合わせて、表現を調整してください。

納期が合わない場合|納期交渉から入る例文

まずは希望された納期での対応が難しい場合の伝え方です。

いきなり断るのではなく、可能であれば代替案として調整後の納期を提示してみましょう。

いつもお世話になっております。フリーランスの〇〇(あなたの名前)です。

この度は、「〇〇(案件名)」についてお声がけいただき、誠にありがとうございます。


ただいま複数の案件を抱えており、お問い合わせいただいた件についてご提示いただいた〇月〇日までの納期ですと、スケジュールの確保が難しい状況です。

もし可能であれば、納期を〇月〇日までに調整いただくことは可能でしょうか。

上記スケジュールであれば、責任を持ってお受けできます。

ご希望に沿えず大変申し訳ございませんが、ご検討いただけますと幸いです。

難しい場合は、今回は残念ながらお力になれず申し訳ございません。

また別の機会にお声がけいただけますと幸いです。何卒よろしくお願い申し上げます。

代替案(納期調整)の提示

 「もし可能であれば」と前置きし、対応可能な納期を具体的に提示しましょう。

クライアント側も調整するか、他の人に依頼するか返答しやすくなります。

調整不可の場合の断り

代替案が受け入れられない可能性も考慮し、「難しい場合は、今回は残念ながら…」と丁寧にお断りの意思も伝えておきましょう。

相手の希望に沿えなかったことへの謝罪も添えると良いです。

次に繋げる一言

今回はスケジュールの都合上で断ざるを得ない場合、「また別の機会に…」と添えることで今後も良好な関係を築きたいという意思を示しましょう。

関係性にもよりますが、今回きりの相談で打ち切られる可能性を少しでも抑えておきたいところです。

報酬が安い場合|角が立たない伝え方と例文

提示された報酬が、自分の価格設定や相場金額と比べて低い場合の断り方です。

金額交渉を試みる場合と、最初から断る場合の例文を挙げます。

【例文1:金額交渉を試みる場合】

お世話になっております。フリーランスの〇〇です。

この度は「〇〇(案件名)」についてお声がけいただき、ありがとうございます。
また、詳細なご依頼内容と報酬についてもお知らせいただき、重ねて御礼申し上げます。


内容を拝見し、ぜひお力になりたいと考えておりますが、今回ご提示いただいた報酬額(〇〇円)ですとお受けするのが難しい状況です。
【お見積もり提案】
・見積もり金額:〇〇円/記事、〇〇円/時間など
・補足説明:この作業には通常〇〇時間程度を要するため、〇〇円からお受けしております。など金額の根拠

もし可能であれば、「希望する報酬額」にてお受けさせていただけないでしょうか?

ご予算に限りがあることは重々承知しておりますが、ご検討いただけますと幸いです。
何卒よろしくお願い申し上げます。

【例文2:断る場合】

お世話になっております。フリーランスの〇〇です。

この度は「〇〇(案件名)」にお声がけいただき、誠にありがとうございます。

大変魅力的なお話ではございますが、 今回ご提示いただいた報酬額ではお引き受けすることが難しいです。

ご期待に沿えず大変恐縮ですが、何卒ご了承いただけますようお願い申し上げます。


また別の機会がございましたら、お声がけいただけますと幸いです。

正直かつ丁寧に理由を伝える

報酬額が理由で受けられないことを正直に伝えましょう。

「ご提示いただいた報酬額ですと…難しい状況です」のように、直接的すぎない丁寧な表現を選びましょう。

希望条件の提示(交渉する場合)

交渉する場合は、希望する報酬額を明確に提示しましょう。

その金額の根拠(作業工程や範囲など)を簡潔に説明できると、相手も検討しやすくなります。

相手の予算への配慮

「ご予算に限りがあることは重々承知しておりますが」といった一言で、相手の状況や都合への配慮を示しましょう。

正直かつ丁寧に理由を伝える

交渉が決裂した場合や最初から断る場合、クッション言葉と謝罪を添えましょう。

「大変残念ですが」「ご期待に沿えず申し訳ございませんが」といった丁寧な対応が大切です。

自分のスキル・対応範囲外の依頼|専門外でも誠実に断る例文

自分のスキルや、普段請け負っている業務範囲から外れた依頼を受けた場合の断り方です。

正直に自分では対応できないことを伝え、可能であれば代替案を示しましょう。

お世話になっております。フリーランスの〇〇(あなたの名前)です。

この度は、「〇〇(案件名)」についてお声がけいただき、誠にありがとうございます。

大変申し訳ございませんが、ご依頼いただいた〇〇(具体的な依頼内容、例:イラスト制作、SNSアカウント運用)につきましては、私の専門分野とは異なり、現在対応しておりません。
私の専門は主に〇〇(自分の専門分野、例:Webデザイン、記事執筆)でして、ご期待に沿える品質での対応は難しいと判断いたしました。

せっかくお声がけいただいたにも関わらず、ご期待に沿えず誠に申し訳ございません。

もしよろしければ、〇〇(依頼内容)を得意とする知人のフリーランスをご紹介することも可能です。


また、私の専門分野である〇〇(あなたの専門分野)に関するご要望がございましたら、その際はぜひお気軽にご相談いただけますと幸いです。

何卒よろしくお願い申し上げます。

正直な理由説明

専門外であること、対応できないことを正直に伝えましょう。

「ご期待に沿える品質での対応は難しい」など、相手を気遣う表現を使うと角が立ちません。

正直な理由説明

自分の得意分野や対応可能な範囲を伝えましょう。

今後のミスマッチを防ぎ、別の機会に繋がる可能性も残すことができます。

代替案の提示(可能であれば)

可能であれば、知人の紹介やワーカーを探す方法の提案など、できる範囲で代替案を示すのも良いです。

相手への配慮が伝わり、より丁寧な印象になります。

※ 紹介する場合は必ず事前に紹介する相手の許可を取りましょう

謝罪と次に繋げる一言

期待に応えられなかったことへの謝罪を改めて伝えることも大切です。

さらに「また専門分野のことであれば」と、今後の関係に繋がる一言で締めくくると良いでしょう。

依頼内容が曖昧な場合|一度確認する例文、その後に断る例文

依頼内容が不明確で、このままでは受けるかどうかの判断ができない場合の対応です。

まずは質問し、それでも不明な点が多い、対応が難しいと判断した場合に断る流れになります。

【例文1:まずは確認する場合

お世話になっております。フリーランスの〇〇です。

この度は「〇〇(案件名)」についてお声がけいただき、ありがとうございます。

ご相談内容について、いくつか確認させていただきたい点がございます。
お忙しいところ恐縮ですが、以下の点について、もう少し詳しくお伺いできますでしょうか。

1. 具体的な作業範囲について(例:〇〇の業務は含まれますでしょうか?)

2. ご要望のイメージについて(例:参考となる資料などはございますでしょうか?)
3. 目的・ゴールについて(例:この制作物でどのような成果を目指されていますか?)

4. ご予算・納期について(もし未定でしたら、目安をお伺いできますでしょうか?)


差し支えない範囲で結構ですので、ご教示いただけますと幸いです。

内容を正確に把握した上で、改めて対応可否や正式なお見積もりについてご連絡させていただければと存じます。

お手数をおかけしますが、何卒よろしくお願い申し上げます。

【例文2:確認後、やはり断る場合

お世話になっております。フリーランスの〇〇です。

〇〇(案件名)に関してご回答いただき、誠にありがとうございます。

いただいた情報を元に慎重に検討いたしましたが、今回の案件につきましては、
「断る理由(例:私のスキルセットではご要望の実現が難しい、スケジュールの確保が困難である)」ため、お引き受けすることが難しいと判断いたしました。


せっかく詳細にご説明いただいたにも関わらず、ご期待に沿えず誠に申し訳ございません。

また何か別の機会がございましたら、お気軽にお声がけいただけますと幸いです。

何卒よろしくお願い申し上げます。

具体的な質問事項

何が不明なのかを具体的に伝えましょう。

箇条書きや番号をつけて返信すると、クライアント側も回答しやすくなります。

丁寧な断り(断る場合)

確認してもなお対応が難しい場合は、その旨と理由(差し支えない範囲で)を丁寧に伝えましょう。

時間を取って回答してくれたことへの配慮として、「詳細にご説明いただいたにも関わらず」といった一文を加えるのも良いです。

曖昧なままなら断る勇気も

もし、質問しても明確な回答が得られずに作業範囲や責任の所在が不明瞭なままの場合は、トラブル回避のためにも断る

あるいは依頼内容を明確にして再度相談してもらう、という判断も必要です。

内容に問題がある・怪しい場合|トラブル回避のための対応文例

依頼内容に法令違反の恐れがある、社会通念上問題がある、クライアントの言動に著しく不安を感じる場合、状況によって対応が異なります。

新規クライアントで内容が明らかに悪質・違法な場合

このような場合は、無理に返信する必要はありません。

返信することで、かえってしつこく連絡されたり、別の要求をされたり、暴言を吐かれたりするなど、状況が悪化するリスクがあります。

ときにはスルーすることも、自己防衛の有効な手段と筆者は考えております。

【もし返信する場合の例文】

この度はご連絡いただき、ありがとうございます。
お声いただき大変恐縮ではございますが、当方ではご相談いただいた内容について対応いたしかねます。

お力になれず申し訳ございません。悪しからずご了承ください。

理由は述べず、簡潔かつ毅然とした態度で断るのが無難です。深入りは避けましょう。

既存クライアントで、無自覚に問題のある依頼をしてきた場合

クライアント自身に悪意はなく、知識不足から問題のある依頼(例:他者の著作物を無断で使用する指示、景品表示法に抵触するような表現の要求など)をしている可能性も考えられます。

この場合は一方的に拒絶するのではなく、問題点を誠実に指摘して代替案を提示すると良いでしょう。

その仕事のプロとしてクライアントの認識を改めつつ、健全な形での仕事を受注することも可能になります。

【返信する場合の例文】

ご連絡ありがとうございます。

ご依頼いただいた〇〇についてですが、
具体的な問題点(例:ご指示の方法ですと著作権侵害にあたる可能性がございます、景品表示法で禁止されている表現に該当する恐れがあります)が懸念されます。

つきましては、代替案(例:著作権フリーの素材を使用する、表現を〇〇のように変更する)といった形であれば、問題なく対応可能かと存じますが、いかがでしょうか。

ご意向に沿えず申し訳ございませんが、法令遵守の観点から、ご理解いただけますと幸いです。

このように、問題点を指摘しつつ、代替となる健全な方法を提案する形が良いです。

もちろん、クライアントが聞き入れない場合は、きっぱりと断る必要があります。

自己防衛をする

怪しい、危険だと感じたら、無理に対応する必要はありません。

特に新規の相手で悪質性が高い場合は、関わらないのが一番です。

関係性を重視する

既存クライアントの場合は、頭ごなしに否定せず、まずは問題点を指摘して改善を提案する姿勢が大切です。

自分自身とクライアントの両方をトラブルから守ることに繋がります。

記録を残しておく

万が一トラブルに発展した場合に備え、日時や発信元が分かる形でメールやチャットのやり取りは記録として残しておきましょう。

継続案件を終了したいとき|関係を損なわず辞退する例文と伝え方

現在進行中の継続案件を、こちらの都合で終了したい場合の伝え方です。

一方的な連絡にならないよう相談ベースで連絡をとり、十分な期間をもって伝えることが重要です。

いつも大変お世話になっております。フリーランスの〇〇です。

現在、貴社より継続してご依頼いただいております〇〇(仕事の内容)につきまして、本日はご相談がありご連絡いたしました。

誠に勝手なお願いで大変恐縮なのですが、
・終了したい意思と理由
(例:他の業務との兼ね合いでリソース確保が難しくなってきたため、自身のキャリアプラン変更のため、体調面を考慮し業務量を調整したいため)、
・終了希望日
現在お受けしている契約を、〇月末日(※具体的な希望期日)をもって終了させていただきたく、ご検討いただけますでしょうか。


これまで長きにわたりお任せいただき、大変感謝しております。
急なご相談となり、貴社にはご迷惑をおかけすることとなり大変申し訳ございません。


後任の方への引き継ぎなど、私にできることがございましたら、可能な限り協力いたします。

まずはご相談となりますが、何卒ご理解いただけますようお願い申し上げます。

相談ベースで切り出す

「終了します」「辞めます」と決定事項のように伝えるのはNG。

「終了させていただきたく、ご検討いただけますでしょうか」と、相談・お願いの形で切り出しましょう。

明確な理由と希望期日を伝える

なぜ終了したいのか、差し支えない範囲で正直な理由を伝えましょう。

また、いつ終了したいのか、具体的な希望期日を明記することも忘れずに。

契約内容にもよりますが、最低でも1ヶ月以上、できれば2~3ヶ月程度の猶予期間をもって相談するのが望ましいです。

交渉の余地(任意)

条件(報酬、業務量、ペースなど)次第では継続を検討できる場合は、その旨を伝えて交渉しましょう。

ただし、最初から終了の意思が固い場合は、その旨を明確に伝える方が誠実です。

文野くん
文野くん

具体的な例文があると分かりやすいね!これなら、いざという時も落ち着いて対応できそう。

美図紀さん
美図紀さん

あくまで例文なので、相手との関係性や状況に合わせて言葉遣いなどを調整しましょうね。

文野くん
文野くん

コピペじゃなくて、ちゃんと自分の言葉で誠意を伝えることが大事だね

フリーランスが仕事を断るリスク

フリーランスが仕事を断ることは、自分の働き方や信用を守る上で時には必要な判断です。

スケジュール管理、適正な報酬の確保、スキルとのミスマッチ回避、心身の健康を保つためにも、断るスキルは不可欠と言えるでしょう。

しかし、仕事を断ることには一定のリスクが伴うことも事実として認識しておく必要があります。

最も分かりやすいリスクは「機会損失」です。

一度断ったことが原因で、そのクライアントからは今後、仕事の相談や依頼が来なくなる可能性は否定できません。

断り方やその理由によっては、クライアントがあなたに対して「不誠実だ」「仕事を選り好みしている」「こちらの状況を理解してくれない」といったネガティブな印象を抱くでしょう。

「この人にはもう相談しないでおこう」と考えてしまう可能性もゼロではありません。

コントロールできないリスクとの向き合い方

文野くん
文野くん

(断ったら嫌われるかもしれない)

文野くん
文野くん

(二度とこのクライアントから仕事をもらえないかもしれない)

といった不安を感じてしまうのは、フリーランスとして活動する上で、ある意味自然な感情です。

断ることが苦手だと感じる方の多くは、こうした不安を抱えているのではないでしょうか。

しかし、ここで重要になるのが「自分にはコントロールできないこと」と「自分にコントロールできること」を分けて考えるという視点です。

あなたが仕事を断った結果、クライアントがどう感じ、どう判断し、今後あなたに依頼するかどうかを決めるのは、究極的には「クライアント次第」です。

あなたが相手の感情や将来の行動を完全にコントロールすることはできません。

自分がコントロールできることに集中する

あなたにコントロールできるのは「あなた自身の行動」です。

つまり、依頼に対して感謝の意を示し、断る正直な理由を伝え、丁寧な言葉遣いを心がけ、できるだけ迅速に返信する、可能であれば代替案を提示する…といった、「誠実で、次につながる可能性のある断り方」を実践すること

これが、あなたが集中すべきことです。

もちろん、どんなに丁寧に、誠意をもって断ったとしても、残念ながら離れていってしまうクライアントはいますが、仕方のないことです。

しかし、誠意をもって対応することで、そのリスクを抑えることができます。

それどころか「今回は残念だったけど、誠実に対応してくれる人だな」と理解を得て、より良い条件で再び声がかかったり、良好な関係が続いたりする可能性だって十分にあります。

コントロールできない相手の反応を過度に恐れず、「今の自分にできる最善の対応は何か?」に意識を向け、誠実に行動することを心がけましょう。

文野くん
文野くん

やっぱり「断ったらもう仕事もらえないかも…」って不安は、付きまとうよね…

美図紀さん
美図紀さん

私たちができるのは、どんな状況でも誠意を尽くして、丁寧に対応すること。それに集中することが、結果的に一番良い方向に繋がるはずです!

まとめ

フリーランスにとって、仕事を断ることは決してネガティブなことではなく、むしろ自分自身とクライアントへの誠実さの表れとも言えます。

重要なのは「断る」という事実そのものよりも、「どのように断るか」という姿勢です。

誠意をもって丁寧に対応すれば、たとえ依頼をお断りすることになったとしても、良好な関係を維持したり、次に繋がったりする可能性は十分にあります。

「断るスキル」もフリーランスとして長く健全に活躍していくための大切な要素です。

仕事を断ることが苦手なフリーランスにおすすめ書籍

それでも、「どうしても断るのが苦手…」と感じる方は、考え方を変えるヒントを書籍から得てみるのも良いかもしれません。

最後に参考になりそうな書籍を2冊、簡単にご紹介します。

なぜか印象がよくなるすごい断り方

「断りたいけど、どう言えば角が立たないだろう?」と感じている方におすすめ。

具体的な断り方のフレーズやテクニック、様々なビジネスシーンに応じた断り方のノウハウが豊富に紹介されています。

また、「断る=悪いこと」という固定観念自体を見つめ直し、ポジティブな断り方を身につけたい方にもおすすめです。

著:津田 卓也
¥1,247 (2025/04/23 18:53時点 | Amazon調べ)

嫌われる勇気

対人関係全般における悩んでいる人「他者からどう見られるか」を気にしすぎてしまう人の意識を変えるきっかけになる一冊です。

記事の中でも触れた「課題の分離」についても対話形式で分かりやすく解説されています。

「自分の課題」と「相手の課題」を切り分けて考えることで、対人関係に対する考え方のヒントが得られます。

著:岸見 一郎, 著:古賀 史健
¥1,485 (2025/04/23 18:56時点 | Amazon調べ)
文野くん
文野くん

断るのって、ネガティブなことばかりじゃないだ!むしろ、良い関係を作るための大事なスキルだ。

美図紀さん
美図紀さん

もし断ることに抵抗を感じる場合、紹介した本なども参考にご自身の考え方や捉え方を変えていくのが良いでしょう!

よくある質問・悩み(FAQ)

フリーランスが仕事を断る際によく抱きがちな疑問・お悩みについて、簡単なQ&A形式でお答えします!

一度依頼を受けた後ですが、やっぱり断りたいです

あなたの信用や評価をかなり落とすので、一度受注してすぐに断るのは避けるべきす。

クラウドソーシングサイトなどでは、マイナス評価をもらう可能性が非常に高くなります。

契約後のキャンセルは契約不履行にあたり、クライアントに多大な迷惑をかけるのでトラブルに発展するリスクもあります。

やむを得ない事情がある場合は、誠心誠意謝罪をして、損害を最小限にする努力(引き継ぎ等)が必要です。

関連記事:仕事受注前にできるトラブル対策はこちらで解説

クラウドソーシングで失敗しない!仕事選び、信頼される働き方、単価UPまで徹底解説

仕事を断る連絡をしたのですが、クライアントから返事が来ません。

断る連絡をした後に相手から連絡が来なくても、ほぼ問題ありません。

相手が内容を確認して返信不要と判断した可能性が高いです。

あなたが誠実な対応をしたのであれば、心配せずに気持ちを切り替えましょう。

断る理由は正直に書いてもいいのでしょうか?

基本的には正直に伝えるのが良いです。

ただし、相手を不快にさせるような表現や詳細すぎる個人的な事情は避けましょう。

「スケジュール」「スキル」「条件」など、事実に基づき差し支えない範囲で伝えるのがベスト。

逆に嘘や曖昧な言い訳は信頼を損ねますのでやめましょう。

丁寧に断ったつもりなのに、SNSなどでブロックされてしまいました…

残念ですが、相手がどう思うか・どう考えるかは、あなたがコントロールできることではありません。

あなたが誠意をもって対応したのであれば、自分を責める必要はありません。

縁がなかったと気持ちを切り替えて、他のクライアントとの関係を大切にしましょう。